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HAEの遺伝的背景

HAEの遺伝的背景

監修:九州大学病院別府病院 病院長 堀内 孝彦先生

HAEの遺伝子異常

Ⅰ型とⅡ型HAEは、C1インヒビター(C1-INH)をコードしている遺伝子SERPING1のさまざまな異常から生じます。

C1-INHは478個のアミノ酸からなる分子量150kDaの糖蛋白で、セルピン(セリンプロテアーゼインヒビター)というグループに属します。主な産生部位は肝臓です。

C1-INHをコードしているのはSERPING1という遺伝子で、11番染色体の長腕12領域の第1バンド(11q12.1)に存在します(図1)。SERPING1は17kbの大きさで、8個のエクソンと7個のイントロンから構成されます。

図1 SERPING1の存在位置
図1 SERPING1の存在位置

HAEはSERPING1のさまざまな異常から生じます。

Ⅰ型HAEでは、SERPING1にlarge deletionやlarge insertion、1〜数十個の塩基の欠失/挿入/置換といったmicro mutationが認められます。この変異により、C1-INH蛋白の合成異常が起こり、C1-INHの蛋白量、活性ともに低下します。

Ⅱ型HAEでは、SERPING1の444番目のアルギニンが他のアミノ酸へ置換する変異が認められます。C1-INHの立体構造は維持されていますが、正常な機能が失われるため、C1-INH蛋白量の産生自体は減少しませんが、C1-INH活性が低下します。

これらのSERPING1の異常は、片側のアレル(対立遺伝子)の異常であるため、C1-INHは完全に欠損状態になることはありません。健康人と比べて低濃度ですが、血中C1-INHが存在しているので、通常は無症状ですが、ある種のきっかけ(外傷、疲労などのさまざまな誘因)でC1-INHが大量に消費されることで発作が起こります。

Ⅲ型HAE(HAE with normal C1-INH)の遺伝子異常は、SERPING1変異とは関連がありません。5番染色体に存在する、凝固第ⅩⅡ因子をコードする遺伝子(F12)に点変異が認められ、凝固第ⅩⅡ因子の機能亢進をきたすと考えられています。

常染色体優性(AD)遺伝と孤発例(de novo変異)

上述したHAEの遺伝子変異は、常染色体優性(AD:Autosomal Dominant)遺伝の形式をとります(図2)。
なお、欧米の報告によると、HAE全体の約75%はAD遺伝形式をとり、残り約25%は家族歴のない孤発例(de novo変異)であるといわれています(図3)。わが国での検討でも孤発例の頻度は、ほぼ同じ結果です1, 2)

図2 常染色体優性(AD)遺伝図
図2 常染色体優性(AD)遺伝図
図3 HAEにおける遺伝性と孤発性(de novo)の頻度
図3 HAEにおける孤発性(de novo)の頻度
1)
一般社団法人日本補体学会HAEガイドライン 改訂2014年版 補体2014; 51(2): 24-30
(http://square.umin.ac.jp/compl/HAE/HAEGuideline2014.html)
2)
Yamamoto T et al: Am J Med Sci 2012; 343: 210-214