遺伝性血管性浮腫(HAE)プロフェッショナル - 腫れ・腹痛ナビ-PRO【医療従事者向け】
メールマガジン登録
検査・診断
患者さん向けの
情報はこちら
鑑別診断② 腹痛・喉頭浮腫

鑑別診断② 腹痛・喉頭浮腫

監修:広島大学皮膚科学 教授 秀 道広先生

原因不明の激しい腹痛を繰り返す、あるいは家族に同様の症状があるといった場合や、窒息を起こす気道浮腫などを診た場合は、HAEを原因疾患の1つとして常に念頭に置くことが大切です。ここでは、腹痛、喉頭浮腫における鑑別のポイントを紹介します。

腹痛の鑑別

①HAEによる腹痛の特徴

遺伝性血管性浮腫(HAE)では、再発性の腹痛がみられます。ドイツの報告では、主な随伴症状として、嘔吐70%超、下痢40%超、めまい約90%が認められ、まれにショックや意識障害、テタニー、血便、腸重積なども生じるとされています1)

腸管の浮腫による腹痛は激烈であることが多く、腹膜炎や消化管穿孔が疑われることがあります。激しい腹痛でも一般的な急性腹膜炎とは異なり、多くの患者さんでは、発熱、腹膜刺激症状、CRPや白血球数の増加を呈しません2)

重度の発作でもCRPは上昇せず、好中球の増加や脱水による血液濃縮(赤血球数とヘマトクリット値の増加)を生じます3)

②画像検査の必要性

HAEとすでに診断がついている患者さんでは、腹痛が以前と同様であれば画像検査は診断に必須ではありません。しかし、未診断の患者さんでは、画像検査で小腸の浮腫性変化・腹水貯留を認めるため(図1)、急性腹症として緊急開腹手術に至ってしまう場合があります。日本全国の専門医94名、患者さん171例によるアンケート結果によって、
2.9%の患者さんが不要な開腹術を受けていることが報告されています4)
HAEを急性腹症の鑑別疾患の1つとして知っておきましょう。

図1 HAEの消化器所見
図1 HAEの消化器所見

喉頭浮腫の鑑別

HAEにおける喉頭浮腫

米国NY州における検討では、血管浮腫による緊急入院はアナフィラキシーや蕁麻疹による入院より多いことが報告されています5)

HAEによる喉頭浮腫では、顔面浮腫が先行することが特徴です。HAEの顔面浮腫は限局性の浮腫であり、アナフィラキシーとは異なり、蕁麻疹を伴いません。

ドイツの報告では、致死的な喉頭浮腫を起こしたHAE患者さんの半数で、顔面浮腫が先行または併発していました6)。また、顔面浮腫の発生から致死的な喉頭浮腫の発生までの期間は平均1.4日でした6)。HAEの患者さんに対しては、顔面浮腫が起きたときは喉頭浮腫による気道閉塞に進展する恐れがあるので、直ちに救急外来を受診するように指示してください。

耳鼻咽喉科の先生方は、咽喉頭領域に血管性浮腫が生じた場合に、診察されることが多いと考えられます。

わが国の耳鼻咽喉科を受診した血管性浮腫患者さん17例を対象に、頭頸部領域の血管性浮腫の臨床的特徴を調べた検討では、症状として、全例が咽喉頭の違和感を訴え、発話障害91%、摂食・嚥下障害85%、呼吸困難感48%が認められました7)。腫脹部位は、延べ件数(24件)では、軟口蓋など咽頭領域が21件(88%)と最も多く、舌18件(86%)が続きました。血管性浮腫の原因を特定できた8例のうちHAE患者さんが1例含まれていました。その他は、後天性C1-INH機能低下(AAE) 1例、薬剤性4例(ACE阻害薬2例、ARB 1例、エストロゲン製剤1例)、アレルギー性 2例(エビ、トマト)でした。原因となった食物や薬剤を中止し、エピネフリン、抗ヒスタミン薬・ステロイド薬などの投与によって、全例が改善しましたが、17例中1例(6%)は挿管管理を要しました。

血管性浮腫は、原因および発症機序にかかわらず、重度の咽頭・喉頭浮腫をきたして窒息を招く恐れがあり、気管挿管や気管切開など、迅速な対応が必要となります。

図2 致死性の顔面、咽頭、声門部に浮腫を起こした1例
図2 致死性の顔面、咽頭、声門部に浮腫を起こした1例
1)
Bork K et al: Am J Gastroenterol 2006; 101: 619-627
2)
大澤 勲 編:難病 遺伝性血管性浮腫(HAE)(医薬ジャーナル社)2016; pp.43
3)
Ohsawa I et al: BMC Gastroenterol 2013; 13: 123
4)
Ohsawa I et al: Ann Allergy Asthma Immunol 2015; 114: 492-498
5)
Lin RY et al: Ann Allergy Asthma Immunol 2005; 95: 159-166
6)
Bork K et al: J Allergy Clin Immunol 2012; 130: 692-697
7)
三浦智広ほか 耳鼻免疫アレルギー(JJIAO)2009; 27:1-9