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HAEとブラジキニン

HAEとブラジキニン

監修:九州大学病院別府病院 病院長 堀内 孝彦先生

ブラジキニンとHAEの浮腫とのかかわり

HAEの発作は血管透過性亢進により生じますが、その主要なメディエーターとなっているのがブラジキニンです1
心理的・身体的ストレスによってブラジキニンが過剰産生され、ブラジキニンB2受容体への結合を介して血管透過性が亢進し浮腫が発現します2-4
HAEにおける浮腫の発現は概ね次のような経過をたどります。

左右のスワイプで、表をスクロールできます
腫れやむくみが起こるときの経過
3分で分かるHAE発作のメカニズム

ブラジキニンの主な産生経路とHAEにおける役割

HAE発作の主な原因は、ブラジキニンの過剰産生による血管透過性亢進であると考えられています。ブラジキニンの産生には、カリクレイン・キニン系、接触系、線溶系などがかかわっていますが、特にカリクレイン・キニン系の関与が重要だと考えられています。健常者では、C1-INHがブラジキニン産生経路に対して抑制的に作用し(図 ブラジキニンの産生経路とC1-INHの主な作用点)、過剰なブラジキニン産生は抑えられています。一方、HAEでは、C1-INHの欠損(Ⅰ型)または機能不全(Ⅱ型)のためブラジキニン産生の制御は不十分ですが、一定量の正常に機能するC1-INHは産生されているため、非発作時には定常状態を保っています。しかし、外傷、手術、疲労、ストレスなどが加わると、この均衡が破れ、ブラジキニンが過剰に産生され急激な発作が発現すると考えられています。

なお、 Ⅲ型(HAE with normal C1-INH)ではC1-INHに異常はありませんが、一部の患者で凝固第XII因子に異常が認められています。このため、カリクレイン・キニン系が常に軽度に活性化していて、過剰なブラジキニン産生が引き起こされることがわかっています。また、最近の研究によると、日本人においても、Ⅲ型の原因としてはじめてプラスミノーゲン遺伝子異常が報告されました5
プラスミノーゲン遺伝子のミスセンス変異がⅢ型HAEの発症と関連していることが示唆されています。

図 ブラジキニンの主な産生経路C1-INHの作用点
図 ブラジキニンの主な産生経路C1-INHの作用点

【カリクレイン・キニン系】

ブラジキニンをはじめとするキニン類を産生する経路です。ブラジキニンは高分子キニノーゲンから産生されます。発痛作用、血管拡張、血管透過性亢進といったさまざまな作用を持ち、疼痛、血圧の調節、炎症、血液凝固などに関連します。HAEの直接的な発症機序として重要な系と考えられています。

【接触系】

内因系凝固の初期の反応です。第XII因子が血管内皮下細胞下組織に接触すると第XII因子が活性化を受け、カリクレイン・キニン系と内因系凝固の連鎖的な活性化を引き起こします(図では、内因系凝固の記載は省略しています)。

【線溶系】

プラスミンが主としてフィブリンを分解しますが、ブラジキニン産生・高分子キニノーゲンの分解にも関与しています。

ブラジキニンの生理的役割

ブラジキニンは9個のアミノ酸からなるペプチドで、血漿および組織のカリクレイン・キニン系で産生され、血圧低下、血管拡張・浮腫、炎症、疼痛など多くの生理的機能を担っています。

ブラジキニンの受容体には2つのサブタイプ(B1、B2)があり、通常は、恒常的に発現しているB2受容体を介して生理作用を発現します。B1受容体は炎症や外傷時に発現します。ブラジキニンがB2受容体に結合すると血管透過性が亢進しますが、C1-INHが正常に機能している場合にはブラジキニンの産生が抑えられているので浮腫は起こりません。
ブラジキニンは、キニナーゼであるアンジオテンシン変換酵素(ACE)や、カルボキシペプチダーゼなどの分解酵素により不活化されます。

1
Zuraw BL. N Engl J Med. 2008; 359: 1027-36.
2
Craig T, et al. World Allergy Organ J. 2012; 5: 182-99.
3
Tse K, et al. Cleve Clin J Med. 2013; 80: 297-308.
4
Han ED, et al. J Clin Invest. 2002; 109: 1057-63.
5
Yakushiji H, et al. Allergy. 2018; doi: 10.1111/all.13550. [Epub ahead of print]