
HAEの治療
- TOP
- HAEの治療
監修:九州大学病院別府病院 病院長 堀内 孝彦先生
HAE治療の概要
遺伝性血管性浮腫(HAE)と診断がつかず、苦しまれている患者さんの中には、最適でない薬物治療や不要な開腹手術が行われてしまうケースもあります。しかし、HAEはきちんと診断がつけば有効な治療を受けることができる疾患です。
HAEの治療は、大きく次の3つに分けられます:
- 急性発作に対するオンデマンド(要時)治療
- 短期予防:歯科治療、分娩、小外科手術などの実施前に行い、血管性浮腫の出現を防ぐ治療
- 長期予防:確定診断されたHAE患者が定期的に薬剤を使用し、血管性浮腫の出現を防ぐ治療
■急性発作に対するオンデマンド(要時)治療
HAEの血管性浮腫はアレルギー性やアナフィラキシー性の血管性浮腫と違い、抗ヒスタミン薬やステロイド薬は効果がありません。エピネフリンも多くの場合無効とされています。現在、HAEの急性発作治療薬として国内で承認されている薬剤は、選択的ブラジキニンB2受容体ブロッカーとC1-INH製剤の2種類のみです。急性発作で、喉頭浮腫、顔や頸部の浮腫または腹部症状が認められる場合は、このいずれかが選択されます。
各薬剤の主な特徴は次の通りです。
薬剤 | 特徴 |
---|---|
選択的 ブラジキニン B2受容体 ブロッカー |
|
C1-INH製剤4,5 |
|
安全性については最新の添付文書をご確認ください。
喉頭浮腫を含むあらゆるHAEの発作に対しては、C1-INH製剤または選択的ブラジキニンB2受容体ブロッカーの投与が基本であると、WAO/EAACIによるHAEガイドライン2017では推奨されています3,4。喉頭浮腫により、かすれ声や呼吸困難などの症状を認めた場合は、必要に応じて、まず気道確保を行ったのちこれらの製剤を投与します。既述の通り、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬、エピネフリンは効果がありません。
妊婦および小児に対する治療5-8
C1-INH製剤、選択的ブラジキニンB2受容体ブロッカーともに、妊婦に対する安全性は確立されていないため、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされています。また、低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児については、安全性は確立されていません(詳細は各製剤の添付文書、インタビューフォームをご参照ください)。
■短期予防5,7-8
2018年11月現在、短期予防に使用可能な薬剤として、国内で承認されているのはC1-INH製剤です。
ただし、歯科治療、出産、手術など侵襲を伴う処置による急性発作の発症抑制の場合に限られます。
■長期予防7-8
2018年11月現在、長期予防に使用可能な薬剤は国内で承認されていません。
- 1
- 秀 道広ら. アレルギー. 2018; 67: 139-47
- 2
- Maurer M, et al. PLoS One. 2013; 8: e53773
- 3
- Maurer M, et al: World Allergy Organ J. 2018; 11(5): 1-20
- 4
- Maurer M, et al: Allergy. 2018; 73(8); 1579-1608
- 5
- ベリナート®P注静注用500 添付文書
- 6
- フィラジル®皮下注30mgシリンジ添付文書
- 7
- 一般社団法人日本補体学会HAEガイドライン 改訂2014年版補体2014; 51(2): 24-30
(http://square.umin.ac.jp/compl/HAE/HAEGuideline2014.html) - 8
- 大澤 勲 編,難病 遺伝性血管性浮腫HAE,医薬ジャーナル社,2016,p59-65